名古屋受験殺人事件

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2016年8月21日、中学受験を控えた小学6年生の長男(当時12)を父親である佐竹憲吾が刺殺した。日ごろから受験指導をしており、刃物を持ち出していたという。長男の態度にいら立ち、胸を包丁(刃渡り約18.5センチ)で1回刺し、殺害した。

加害者の父親である佐竹憲吾が自閉症スペクトラム症であることがわかっている。

犯行動機が想像を越えるののは、いかにも自閉症スペクトラム症らしいところである。そもそも、息子を殺してしまったら受験をする息子がいなくなるので、元も子もない。

この事件をもって受験の弊害や親の教育の身勝手さを語る論調も見かけるが、あまり適切ではないように思う。犯人の父親が受験に捕らわれた点はあるが、そのありようがあまりにも病理的すぎるからだ。

裁判では、殺意の有無が争点の一つになった。検察側は、佐竹被告は「殺意をもって長男の胸を包丁で刺した」と主張。これに対し弁護側は「刃物を見せて怖がらせ、(受験勉強の)態度を改めさせようとした。殺すつもりもなかった」として殺意を否定。傷害致死罪にあたると訴えていた。

判決は、傷の状況などから殺意はあったと認定。その上で、斎藤裁判長は「中学受験の指導の名の下、長男の気持ちを顧みることなく自分の指導・指示に従うよう独善的な行為をエスカレートさせたあげく、衝動的に犯行に及んだ」と非難。「父親によって命を奪われた長男の驚きや苦痛は察するにあまりある」と述べた。

加害者の父親は東海中学校の出身であり、自分と同じ高校に息子を進学させたかったようである。将来的には医療関係の仕事にしたかったようだ。 http://harikirimaruko.net/satakekeigo/

被告人の父親T氏(78)が、「私も息子(被告人)を包丁で脅したことがある」
私も憲吾も猟奇的なところがある。精神科医の先生にお世話になってしっかり治癒してほしいと思います。
https://bunshun.jp/articles/-/12934

被告もその父親から同様の扱いを受けていたという。包丁を持ち出すことは父親の父親から引き継がれた方法のようだ。

中学受験が始まるまで加害者の父親は暴力的なところはなかったという。「受験が始まるまでは、楽しかった。」とも法廷で証言している。東海中学校への受験によって変わってしまったようだ。 https://bunshun.jp/articles/-/12935

加害者の父親の中では「東海中学校への受験」というものが、他者からは想像できないほど大きなものだったのだろう。

質問には自分の言葉で誠実に答えていたが、いかんせん何事も「ゼロか百か」なのである。

文春に寄稿しているおおたとしまさ氏が加害者父親に抱いた印象である。このあたりは、言わずもがな、といったところか。