大分宇佐こども園襲撃

2017年3月31日、大分県宇佐市で射場健太(32)がこども園に侵入し、居合わせた小学生や職員ら4人を竹刀とナイフで負傷させた事件。犯人の射場健太が自閉症スペクトラム症であったことがわかっている。

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加害者の射場健太は自閉症スペクトラム症であったようだ。被告人は小学校のときからいじめを受け、不登校になりひきこもり状態なったようだ。

被告人は,小学校低学年の頃からいじめを受け,小学校5年生頃からは不登校となり,中学校進学後も同様であった。被告人は,受験をして,平成12年4月に高等学校に進学したものの,間もなく対人関係に苦痛を覚えて不登校となった末,退学した。 被告人は,高等学校に登校しなくなった後,漫画を描いたり,テレビゲームをするなどして自宅に引きこもるようになった。被告人は,父P2が営むコンビニエンスストアでアルバイトをしたことがあったが,それ以外はほぼ自宅に引きこもって生活をしていた。

犯行動機

犯行動機は次のように書かれている。

本件犯行の動機については,自動車の騒音障害に悩まされたとしながら自動車を運転していない児童相手の犯行をしたり,いじめの加害者に復讐したかったとしていながらどこで働いているかなど一切調べていなかったなど了解できない事情を被告人は供述している。しかしながら,児童相手の犯行の点は,「実験」を目的とするものであり,いじめ加害者についての調査不足は,被告人のこだわりと想像力の障害によるものである。本件犯行の目的は,「復讐-実験-安楽死」であり,表面的には風変わりな考え方ではあるが,アスペルガー症候群の特性を考慮すると,了解は可能である。

  • 自動車騒音の恨み → 運転できない児童への犯行
  • いじめ加害者への復讐 → こども園に加害者はいない
  • 児童相手の犯行の点は「実験」を目的とするもの、と供述
  • 本件犯行の目的は「復讐-実験-安楽死」である、と供述

当初の動機に合理的な対象を選ばず(=関係のない人)に対して犯行を行うのは自閉症スペクトラム症りの犯罪の一つの特徴である。
後半の2つに関しては、もう少し情報が必要である。

児童に恐怖を与えることで児童のその後の成長に対してどのような影響が出るか実験をしたかった

この実験をしたかったようだ。自身がいじめ受けたという体験からこの実験は思いついたのではないかと推測できる。

安楽死の方は次のように書かれている。

いじめの加害者への復讐を遂げた上で警察官に射殺されること

自閉症スペクトラム症による犯罪は動機が本人の供述をがないと、理解しづらい。
最終的に警官に射殺されると予測していたということは、池田小学校事件くらい大きな事件を起こそうと思っていたのかもしれない。死者は出ず、4人負傷というこの事件規模では、警官に射殺されるというのは無理である。犯人の中ではもう少し大きなことを起こす予定だったのだろう。

自閉性

事件に関連した自閉性は以下のようなものだったようだ。

  • 自分を過去にいじめた人間に復讐するという考えに没頭(こだわり)
  • 自身の容姿に強いコンプレックス(こだわり)
  • コミュニケーションの障害(一方的に話し続ける、指示語が多く理解ができない)
  • 聴覚過敏があった(自動車の排気音や笑い声等に極端に過敏)
  • フラッシュバックがあった

被告人には,本件各犯行当時,〔1〕自分を過去にいじめた人間に復讐するという考えに没頭していたことや自身の容姿に強いコンプレックスを抱いていた といった,こだわりの強さ,〔2〕一方的に話し続ける傾向が顕著で,指示代名詞を多用するなど,被告人の話から被告人の意図を理解することは容易ではない といったコミュニケーションの障害が見られた。

被告人には,〔3〕通常の感覚では苦痛や恐怖に感じない音,特にP4園の自動車の排気音や笑い声等に極端に過敏になっていた(聴覚過敏),〔4〕そう した音等の刺激により,過去に暴走族から追いかけられた際等の不快な記憶が想起される症状(フラッシュバック),〔5〕目の前にないものや予想と違うこと に思い至らない傾向(想像力の障害)も見られた。

上記〔1〕及び〔2〕は,それぞれ,広汎性発達障害の下位分類に当たるアスペルガー症候 群と呼ばれる心理発達の障害における,〔1〕関心と活動の範囲が限局的で常同的反復的であること(こだわりの強さ)及び〔2〕相互的な社会的関係の質的障 害(相手の心を予想しながら話したり行動したりするのが苦手であるというコミュニケーションの問題)二つの診断基準に合致しており,上記〔3〕ないし 〔5〕の症状ないし傾向もアスペルガー症候群にしばしばみられるものである。

事件概要

事件の概要は下記である。

被告人は、精神症状等から、自宅近くの社会福祉法人の園の周辺から聞こえてくる自動車の音や笑い声に極端に過敏になり、不満を持っていたところ、同園に侵入し、居合わせた被害児童(当時9歳)に対し、竹刀でその顔面及び右肩部を殴打する暴行 を加え、全治約1週間を要する傷害を負わせ、P7(当時38歳)には加療約1週間を要する傷害、P8(当時70歳)には加療約8日間、P9(当時41歳) に全治約10日間の傷害を負わせたとの建造物侵入、傷害と、自動車を強取しようと考え、自動車助手席に乗車していたP12(当時65歳)の腹部付近に持っていたナイフ(刃体の長さ約18.8センチメートル)を近づけてその反抗を抑圧して同車を強取しようとしたが、P12が逃げ出したためその目的を遂げな かったとの銃砲刀剣類所持等取締法違反、強盗未遂、その他の住居侵入の事案において、被告人の障害特性を考慮し、意思決定に対する非難の程度は相当程度減 殺されるとして、被告人に対し、懲役4年を言い渡した事例。

引用はすべて「大分地方裁判所中津支部(第一審)」の判決文より。